高脂血症・高尿酸血症外来
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脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症(高脂血症)の診断と治療は日本動脈硬化学会編著動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018を参考に行っています。
どんな病気?
血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が多くなる、HDL(善玉)コレステロールが少なくなる病気です。
脂質異常症(高脂血症)ってどんな病気?
私たちの血液の中には、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂質と呼ばれる物質が含まれています。脂質は、細胞膜やホルモンの材料となったり、エネルギーの貯蔵庫になるなど、私たちの体の機能を保つために大切な働きをしています。
通常、脂質は、肝臓で作られたり食事からとり込まれたりして、血液中に一定の量が保たれるように調節されています。脂質異常症(高脂血症)は、体の中で脂質の流れ(代謝)がうまく調節できなくなったり、食事から体の中に入ってくる脂質の量が多くなりすぎたりして、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が多くなりすぎている状態、またはHDL(善玉)コレステロールが少ない状態が続く病気です。
脂質異常症(高脂血症)をほうっておくと、血管の動脈硬化が少しずつ進んでいき、やがて心筋梗塞や脳卒中などの深刻な病気を引き起こしかねません。
動脈硬化には、さまざまな病気や生活習慣などが関係していますが、脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化ともっとも関係の深い病気のひとつです。したがって、血液中の脂質の値を測って、常にこれらを適正な値に調節していくことは、動脈硬化の予防のためにとても大切です。
なお、脂質異常症は、以前は「高脂血症」と言われていました。しかし脂質のひとつであるHDL(善玉)コレステロールは高いことが望ましく、この値が低いときに病気と診断されます。このことをふまえて、2007年より「高脂血症」は「脂質異常症」という病名に変わりました。ただし、「高脂血症」という呼び方がなくなったわけではありませんので、病院・診療所や薬局で「高脂血症」と診断されたり、「高脂血症の薬」と説明されたりすることもあるでしょう。
脂質異常症の種類
脂質異常症は、その原因によって「原発性高脂血症」と「二次性(続発性)高脂血症」の2つに分けられます。
また、異常値を示す脂質の種類によって「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高中性脂肪血症」にも分けられますが、一人の患者さんが複数のタイプをあわせ持っていることもあります。
原発性高脂血症
遺伝によって発症する脂質異常症で、はっきりした遺伝子で起こるものも、まだ遺伝子が同定されていないものもあります。
原発性高脂血症のひとつである「家族性高コレステロール血症」は、遺伝が強く関係しており、生活習慣とほとんど関係なく起こります。
治療は食事運動療法と薬物療法になります。通常は内服薬の治療ですが、遺伝性が強く関与している家族性高コレステロール血症(20代、30代で重度な動脈硬化病変、心筋梗塞、脳梗塞を発症します)には月に一度の注射製剤を使用します。
二次性高脂血症
他の病気とくに肥満や薬が原因となって起こるタイプの脂質異常症です。原因となっている病気とくに肥満を治療したり、可能ならば薬を変えたりやめたりすることで、脂質異常症を改善することができます。
原因となる病気にはとくに肥満のほかに、甲状腺機能低下症や肝臓病、腎臓病、糖尿病などが、原因となる薬には、ステロイドホルモン剤や利尿薬、避妊薬などがあります。
高LDLコレステロール血症
動脈硬化に関係が深いLDL(悪玉)コレステロールが高いタイプの脂質異常症です。
低HDLコレステロール血症
動脈硬化を防ぐ働きを持つHDL(善玉)コレステロールが低いタイプの脂質異常症です。
高中性脂肪血症
動脈硬化と関係が深く、急性すい炎とも関係がある中性脂肪(トリグリセライド)が高いタイプの脂質異常症です。
脂質異常症の診断
脂質異常症は、採血した血液の中のLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の値によって診断されます。この3つの脂質の値のいずれかが、下の表の基準値にあてはまると、脂質異常症と診断されます。
LDL(悪玉)コレステロール | 140mg/dL以上 120-139mg/dL |
高LDLコレステロール血症 境界域高LDLコレステロール血症* |
HDL(善玉)コレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
中性脂肪(トリグリセライド) | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版
The lower, the better(コレステロールはどこまで下げるべきか?)について;心臓血管疾患、脳血管疾患、動脈硬化症の危険度がLDL-コレステロール(LDL-C,悪玉コレステロール)の上昇に比例して上がることは共通の認識となっています。コレステロールを下げる薬(スタチン系薬剤)によってLDL-Cが下がるとこれらの疾患の一次予防、二次予防になることも証明されています。そこで、国際的にはLDL-Cの目標値は100mg/dl以下になっています。いろいろな研究から、よりLDL-Cが低いほうが上記の疾患の予防につながります。これは治療前のLDL-Cの値によらずです。このことを、“The lower, the better””低いに越したことはない”と言っています。
高尿酸血症外来
高尿酸血症の診断と治療は日本痛風・尿酸核酸学会編著高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂版(2022年追補版)を参考に行っています。
高尿酸血症と痛風とはどんな病気か
(1)高尿酸血症とは
ヒトの体のなかの細胞にはすべて遺伝子が入っています。この遺伝子をつくっている核酸(かくさん)という物質のなかに含まれるプリン体の分解産物が尿酸です。
体のなかでつくられた尿酸のうち、約80%は腎臓から尿のなかに溶けた状態で排泄されますが、この排泄量が少なかったり、体のなかで尿酸がつくられすぎて排泄が間に合わなかったり、あるいはその両方が起こると血液中に尿酸が増えてきます。このように、血液中の尿酸が正常値を超えて高くなった状態が高尿酸血症です。
日本痛風・尿酸核酸代謝学会では、2019年に「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」を作成し発表しました。それによると、高尿酸血症とは尿酸の血液中に溶解可能な濃度である7.0mg/dlを正常上限とし、これを超えるものを高尿酸血症と定義されています。
(2)痛風とは
高尿酸血症の状態がある程度長期化すると、尿酸は尿酸塩(にょうさんえん)という結晶の形になって、関節や腎臓などに析出してくるようになります。このように高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が関節に沈着することによって急性の関節炎を起こす病気が痛風です。
日本では、第二次世界大戦以前の痛風はまれな病気でしたが、1960年以降、痛風患者さんは急増しています。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、1998年度に痛風で通院している患者さんの数は約59万人とされており、その10年前の調査と比較して約2倍に増えています。
痛風は40〜50代の男性に多く、患者さんの95%以上は男性で占められています。女性は男性に比べて少なく、発症する場合はほとんどが閉経期以降です。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには、腎臓での尿酸の排泄を促進するはたらきがありますが、閉経期以降、このホルモンの分泌が低下するので、血液中に尿酸がたまる傾向になるためと考えられています。
原因は何か
高尿酸血症は、体のなかでの尿酸の産生が増加することによる産生過剰型と、腎臓からの尿酸の排泄が減少していることによる排泄低下型に分類されています。またそれぞれに、尿酸代謝の異常が一次的である原発性と、腎不全、白血病、骨髄腫などの別の病気や薬剤などによって二次的に高尿酸血症となる続発性に区別されています(表1)。
多いのは原発性の高尿酸血症ですが、そのほとんどは原因がよくわかっていません。しかし、なかには、プリン体が尿酸へと代謝される過程で、必要な代謝の酵素が遺伝的に異常に活発に働いたり、別の経路ではたらく酵素が遺伝的に欠けていると尿酸が過剰に産生されるものなど、原因が明らかなものもあります。
痛風は以前、帝王病といわれ、美食、大酒の習慣をもつ上流階級の病気と考えられていました。しかし、現在では食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加により、誰もが高尿酸血症や痛風になる可能性があります。美食よりもむしろ過食が問題であり、高カロリー食や肥満は尿酸の産生量を増やします。また、アルコールや果物類(果糖)の過剰摂取、ストレス、過度の運動も尿酸を上げるようにはたらきます。
症状の現れ方
アルコールやストレスなどが引き金となって痛風発作が生じる場合があります。発作時には、手足の関節がはれて、熱感を伴う激しい痛みが起こります。だいたい24時間でピークに達し、1~2週間で自然に痛みはなくなっていきます。
このような時期に十分治療が行われずに進行すると、痛風結節(つうふうけっせつ)といって関節の周囲などに尿酸塩の結晶が析出して、こぶのようにはれてきます。とくに、足の親指のつけ根の関節や、そのほかの手足の関節、耳の軟骨、腱(けん)、皮下などにも結節は現れます。 また、尿酸塩が腎臓の髄質(ずいしつ)にたまると、腎機能障害を起こし、これを痛風腎(つうふうじん)といいます。尿酸塩を中心とする尿路結石ができやすくなることも、特徴のひとつです。
また、高尿酸血症・痛風は虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、脳血管疾患の危険因子のひとつとされています。肥満、脂質異常症や糖尿病、高血圧などを合併することも多く、その結果として心臓病、脳血管障害を併発してくることも少なくありません。
検査と診断
痛風は、痛風関節炎の発作、痛風結節などの症状、血清尿酸値、関節液などにより診断されます。痛風と類似した病気としては、関節リウマチ、変形性関節症、偽痛風(ぎつうふう;ピロリン酸カルシウムが沈着)、外反母趾(がいはんぼし)などがあります。それらと区別するため、それぞれの検査も行います。
痛風の進行状態や腎機能障害や尿路結石の有無をみるために腹部超音波検査(腹部エコー)、 X線検査、検尿、血液検査を必要に応じて行います。合併症があるかないかを調べるために脂質、血糖、肥満度、さらに心電図や心エコーなどの循環器の検査も必要に応じて行います。
治療の方法
痛風の治療は、痛みを除くだけではなく、尿酸を正常値にコントロールして、痛風関節炎の発現や合併症を予防することにあります。
治療は薬物療法が中心ですが、食事、嗜好品(しこうひん)などの生活習慣の改善も大切です。
薬物には、痛風発作に対する治療薬と、尿酸値をコントロールする薬があります。痛風発作の予感がする時、つまり発作の起こる部分がうずいたり、はれぼったい感じなどがあればコルヒチンを服用します。発作が起こってしまってからは、非ステロイド性抗炎症薬を短期間に比較的大量に服用します。副腎皮質ステロイド薬の短期間内服も十分な作用を発揮します。
尿酸値を下げる薬には、尿酸排泄促進薬(はいせつそくしんやく)(プロベネシド、ベンズブロマロンなど)、尿酸生成抑制薬(トピロリック、アロプリノール)があります。原則として、前述したような尿中への尿酸の排泄量が低下した患者さんは尿酸排泄促進薬を、体のなかでの尿酸の産生が増加した患者さんは尿酸生成抑制薬を服用します。
しかし、尿路結石の既往があったり、腎機能に障害のある患者さんは尿酸排泄促進薬により、これらの合併症を悪化させる危険性があるため尿酸生成抑制薬を服用し、尿中尿酸排泄量を抑制しなければなりません。
尿酸の腎臓への沈着や、尿路結石の発症を予防するためには、尿量を増加させることが必要です。そのため飲水量を増やし、1日尿量を通常の約2倍の2000ml以上に保つようにしなければなりません。
また、痛風の患者さんの尿は酸性度が強いため、尿をアルカリ化する食品である野菜や海藻などを多くとるようにします。食事療法によっても酸性尿の是正が不十分な場合は、重曹やクエン酸製剤などの尿アルカリ化薬を服用する必要があります。尿pHを6.0~7.0に保つように調節しなければなりません(表2)。
痛風や高尿酸血症には、前述したように肥満、高血圧、脂質異常症、耐糖能(たいとうのう)障害(糖尿病)が高い確率で合併するといわれています。痛風の患者さんの食事では、原則として食べてはいけない食品はありませんが、過食は禁物で、肥満にならないような食事をする必要があります。
また、脳血管障害、心臓病などの合併症を防ぐために、塩分や脂肪分を制限することも必要になります。
キサンチンオキシダーゼについて;尿酸のもととなるのは核酸(DNA,RNA)です。核酸はプリン体、ヒポキサンチン、キサンチンを経て尿酸となります。この“ヒポキサンチン→キサンチン” “キサンチン→尿酸”へと変化(代謝)する過程にキサンチンオキシダーゼという酵素が関わっています。このキサンチンオキシダーゼ反応の副産物としてスーパーオキシド(活性酸素、いわばよけいな酸素)が発生します。このスーパーオキシドは癌や生活習慣病、老化等さまざまな病気の原因となるということが解ってきました。喫煙もスーパーオキシドを介して発癌の原因となると言われています。スーパーオキシドはビタミンCを破壊することによってしみ、くすみの原因となることも知られています。したがってキサンチンオキシダーゼを阻害するお薬つまり尿酸を下げるお薬は尿酸を下げるばかりではなくスーパーオキシドを低下させるという意味においても有効なお薬です。